ワークショップ(ソウル、2019年5月9日〜10日)「現代における環境の政治学」

ワークショップ(ソウル、2019年5月9日〜10日)「現代における環境の政治学」

国際ワークショップ

現代における環境の政治学

日時:2019年5月9日(木)、10日(金)

会場:ソウル

主催者:パク・ソンウ、ユク・ホイ

主催:

又松(ウソン)大学校国際メディア・コミュニケーションアート学部

韓国学術振興財団(The Internet of Other People’s Things)

哲学と技術のリサーチネットワーク

発表者:

木岡伸夫(哲学者/大阪)

ヴィクトル・プティ(哲学者/パリ)

ユク・ホイ(哲学者/ベルリン)

パク・ソンウ (文化理論家/ ソウル)

パク・ジョンソン (メディア・アーティスト/ソウル)

イ・キウォン (文化理論家/ソウル)

パク・ジヌ (メディア理論家/ソウル)

討論参加者:

チョン・イルジュン (社会理論家/ソウル)

ヨ・ヒョンジュ (美術批評家/ソウル)

キム・スチョル (文化理論家/ソウル)

キム・ファンソク (STS研究者/ ソウル)

チョ・ヒョンジュン (出版業/ ソウル)

「生体とその環境」という論考のなかで、フランスの哲学者ジョルジュ・カンギレムは、環境(milieu)という概念の歴史の概略図を描いている。近代初期からニュートン、ラマルク、コント、スペンサーなどを経由してドイツの生態学者で動物学者のヤーコプ・フォン・ユクスキュルの環世界(Umwelt)の概念へといたるその歴史は、生体とその環境のあいだの、ますます緊密で複雑に絡みあった関係性をも示している。ユクスキュルのいう環世界が明らかにしているのは、生体がもつ外部の環境(Umgebung)への適応プロセスの存在だ。つまり、環世界はすでに内面化された環境であり、より正確にいえば取捨選択された環境なのである。ユクスキュルの環世界の概念は、動物の分析に強く制限されており、かならずしも人間に向けられたわけではない。というのも、人間はたんに環境へ適応するだけではなく、同時に道具を発明し環境を変化させることで、環境を取り込もうとするからだ。人間は環境の作り替えによって動物を家畜化(domesticate)させる。だがその一方で、人間はみずから創りだした記号や道具によって自分自身も環境に順応(domesticate)させるのである。またこの人間の自己順応のあり方は、(元素から物体、全体やいまでいうシステムに至る)技術的な器具の具体化、つまり都市性の歴史としても解釈できるようなそのプロセスにしたがって発展してきた。コレージュ・ド・フランスでの講義のなかで、ミシェル・フーコーはこうした環境の作り替えによる順応の形式を「環境的統治性(environmental governmentality)」と称している。

 

今日では、この環境的統治性はさまざまな形式のテクノロジーにはっきりと現れている。そうしたテクノロジーは、ユーザーとプラットフォームの双方から作りだされ、非人間的なセンサーによって読み取られる「安価なデータ」の急激な増殖によって下支えされている。あらゆる物理的空間が多機能的・多重時間的な空間として知覚されるこのデジタル環境(digital milieu)のなかで、いまや環境的統治性はアルゴリズム的統治性と重なりあっているのだ。デジタル環境における空間が多機能的で多重時間的だというのは、ヴァーチャル化の技術によって無数の出来事が相互に干渉することなくひとつの空間内で発生しうるからである。いくつものセンサーとVR/AR技術を備えつけられた時間と空間は、ユーザーへのリコメンドや監視、社会信用システムなどといった特定の目的にそって設計されたアルゴリズムによって解析され、各個人に最適化される。デジタル技術によって空間が抽象化、複雑化されることで、ユーザーとその環境のあらたな相互作用や関係性のかたちが切り開かれるだろう。それと同時に、個人も集団も、ますますスマート環境が構成する人工的な取捨選択の結果生みだされる不適応性にしたがって決断するよう強いられることになるのである。われわれは、今日のこのような環境-アルゴリズム的な統治性をいかに理解し、批判的に検討すればよいのだろうか? またこうしたテクノロジーに関するあらたな想像力や活用法とは、一体どのようなものなのだろうか?

スケジュール:

59日「環境を問う——哲学と政治学」

 

13:30-14:00 導入

パクソンウ(又松大学校教授)「新たなる時代/思考/問いと環境」

 

14:00-15:10 第1部

木岡伸夫(関西大学教授)「風土学における非二元論的思考」

 

15:10-16:20 第2部

ヴィクトルプティ(哲学者)「Environment vs. Milieu——歴史的、哲学的見地から」

 

16:20-16:50 休憩

 

16:50-18:00 第3部

ユクホイ(哲学者)「機械と生態」

 

18:00-19:00 全体討論

チョンイルジュン(高麗大学校教授)ほか、全参加者

 

510日「環境/テクノロジー/都市/社会」

 

10:45-11:00 導入

 

11:00-11:50 第1部

発表者:パクジョンソン(メディアアーティスト、又松大学校)

討論者:ヨヒョンジュ(美術批評家、韓南大学校)

 

12:00-13:30 昼食

 

13:30-14:50 第2部

発表者1:イキウォン(聖公会大学校研究教授)

発表者2:パクジヌ(建国大学校教授)

討論者:キムスチョル (建国大学研究教授)

 

15:00-15:30 休憩

15:30-16:30 第3部:刊行記念セッション

ユクホイ『中国における技術への問い——宇宙技芸試論』(韓国語版への導入)

 

16:30-18:30 全体討論

キムファンソク (国民大学校教授)

チョヒョンジュン (出版社 Saemulgeol)ほか、全参加者

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